宝塚記念が終わると、中央競馬は夏競馬のシーズンに突入します。しかしこの夏競馬、特にライトな競馬ファンにとってはあまり楽しみが多くないシーズン、言ってしまえばつまらないシーズンとも言われています。
果たして本当にそうでしょうか?夏競馬には夏競馬の特徴があり、それを知ればどんな競馬ファンでも、十分に楽しめる競馬シーズンです。また、夏競馬を楽しめれば、より競馬の面白みを知ることもできますので、まずは夏競馬を楽しむポイントを見ていきましょう。
目次
夏競馬がつまらないと言われる理由
まず、夏競馬がつまらないと言われている理由に関して3つほど挙げてみましょう。
- 当たらない
- 盛り上がるレースがない
- 知っている馬がいない
特にライトなファンがつまらないと思うのは、おおよそこのあたりの理由でしょう。この理由に関して細かく解説していきましょう。
荒れやすく勝ちづらい
なんだかんだ言っても、競馬が楽しいかどうかは馬券が当たるか当たらないかという点が非常に大きいかと思います。その点で夏競馬は当てるのが難しく、これがつまらないと感じる大きな理由なのではないでしょうか?
なぜ夏競馬は荒れるのか?ポイントは大きく分けて2つです。
一つ目は「競走馬にとっても厳しい季節」ということです。日本の夏は高温多湿。これは人間にとっても競走馬にとっても非常に過酷な環境です。この過酷な環境は、競走馬の体調調整も容易ではなく、強いはずの馬があっさり負けたり、聞いたこともない馬が突然重賞を勝ったりと、とにかく荒れる要因となっています。
夏競馬を楽しむコツは、なんといっても出走馬の調子の見極めができるかどうかにかかっているといいうことになります。
二つ目は「三歳馬が古馬とともに走るようになる」という点です。三歳馬は、日本ダービーの週から一部古馬と同じレースに出走できるようになります(目黒記念など)。そして夏競馬開始に合わせて「三歳限定」の条件戦が廃止され、条件戦もすべて「四歳以上」から「三歳以上」に変更されます。
ここで問題になるのが、三歳馬の実力の見極めです。春競馬まで行われている三歳馬の出走条件は、「新馬」、「未勝利」、「1勝条件」、「OPクラス」の主に4つです。ここに夏競馬から「2勝条件」、「3勝条件」が加わることになります。
春までは、2勝している三歳馬はOPクラス、重賞に出走していましたが、夏競馬からは「2勝条件」に出走することになります。つまり古馬の「2勝条件」のレースに、OPクラスでは結果が出ていなかった3歳馬や、重賞でも好勝負していた3歳馬が出走してくることになります。
こういった馬の実力と、2勝条件で戦っていた古馬のどちらが強いかを見極めるのが難しく、これも夏競馬があれる原因となります。
このように夏競馬は、ほかの季節の競馬ではあまりない、特殊な事情が絡むことで予想が難しく、レース結果は荒れ、当てにくい季節ということになります。
目玉レースがない
中央競馬では、毎週必ず1つ以上の重賞が行われるようにスケジュールが組まれています。これは夏競馬の期間も同様です。しかし、夏競馬の季節には、GⅠレースは組まれていません。春と秋はGⅠレースの開催時期であり、毎週のようにGⅠレースが組まれます。
冬の競馬を思い出しても、年末には有馬記念やホープフルS、年が明けて2月にがフェブラリーSが組まれているため、盛り上がるポイントがあります。こうしたレースが夏競馬の2ヶ月間には存在しません。
しかし、まったく盛り上がらないかといえばそうでもありません。夏競馬最大の重賞といえば、8月に札幌で行われる札幌記念(GⅡ)があります。過去にもこの札幌記念で好走下馬が、その後の秋競馬で活躍した歴史もあり、注目すべきレースといえるでしょう。
年 | 馬名 | 札幌記念成績 | 同年秋の実績 |
2020年 | ノームコア | 2番人気 1着 | 香港C1着(4番人気) |
2020年 | ラッキーライラック | 1番人気 3着 | エリザベス女王杯1着(1番人気) |
2018年 | サングレーザー | 2番人気 1着 | 天皇賞・秋2着(4番人気) |
2018年 | モズカッチャン | 4番人気 3着 | エリザベス女王杯3着(1番人気) |
2016年 | ネオリアリズム | 5番人気 1着 | マイルCS3着(7番人気) |
2016年 | モーリス | 1番人気 2着 | 天皇賞・秋1着(1番人気) 香港C1着(1番人気) |
2016年 | レインボーライン | 4番人気 3着 | 菊花賞2着(9番人気) |
2014年 | ゴールドシップ | 1番人気 2着 | 有馬記念3着(1番人気) |
2013年 | トウケイヘイロー | 2番人気 1着 | 香港C2着(5番人気) |
2011年 | トーセンジョーダン | 1番人気 1着 | 天皇賞・秋1着(1番人気) |
過去10年で、札幌記念で3着以内に入って馬の、同年の秋GⅠ実績です。秋GⅠ戦線で穴をあける馬も多く、毎年札幌記念には注目しておきたいところです。
競馬ファンなら誰でも知っている名馬が不在
夏競馬には注目すべきGⅡ・札幌記念こそあるものの、GⅠレースは組まれていません。そのため多くの有力馬、期待馬はこの時期を休養に充てます。まずは主なGⅠレースの、カテゴリーごとに競走日程をご紹介しましょう。
カテゴリー | 春最終戦(GⅠ) | 秋初戦ステップレース | 秋初戦(GⅠ) |
3歳牝馬 | 5/23 オークス | 9/11 紫苑S 9/19 ローズS |
10/17 秋華賞 |
3歳牡馬 | 5/30 日本ダービー | 9/20 セントライト記念 9/26 神戸新聞杯 |
10/24 菊花賞 |
古馬牝馬 | 5/16 ヴィクトリアマイル | 10/16 府中牝馬S | 11/14 エリザベス女王杯 |
古馬短距離 | 6/6 安田記念 | 9/12 京成杯AH 9/12 セントウルS |
10/3 スプリンターズS |
古馬中長距離 | 6/27 宝塚記念 | 9/26 オールカマー 10/10 毎日王冠 10/10 京都大賞典 |
10/31 天皇賞【秋】 |
※2021年日程
日本の真夏は気候条件が過酷であり、馬にとっても過ごしやすい季節ではありません。そこで多くの有力馬は、夏競馬の期間は涼しい北海道などで休養し、秋競馬に備えます。
実力馬、期待馬がいないことは、特にライトな競馬ファンにとってはつまらないと感じる要因といえるでしょう。
夏競馬を理解すれば楽しめる!ポイント3つ
夏競馬をつまらないと感じる主な理由は上記の通り。では、そんな夏競馬を楽しむにはどのような方法があるのでしょうか?じつはつまらないと感じる理由も、考え方を変えれば楽しめる方法にもなります。
★有名な馬がいない&大きなレースがない → 新たな名馬の誕生が見られる
★配当が荒れる傾向で当たらない → 当てることができれば夢が見られる
★ほかの季節には見られない激闘が見られる
つまらないポイントを克服する2つのポイントと、夏競馬でしか見られないポイントの計3つに関して詳しく解説していきましょう。
未来の名馬を発掘!
現役の有力馬・期待馬の多くが休養に入る季節になりますが、未来の名馬たちにとってはデビューの時期になるのが夏競馬です。
夏競馬では2歳新馬戦が本格化。各競馬場で多くの2歳馬がデビューし、また2歳馬の重賞レースが多く組まれるのも夏競馬の特徴です。
そこで近年の活躍馬で、夏競馬デビューの馬を何頭か紹介していきましょう。
馬名 | デビュー戦 | その後の勝ち鞍 |
クロノジェネシス | 2018年9月2日 2回小倉 | 宝塚記念等GⅠ4勝 |
アーモンドアイ | 2017年8月6日 2回新潟 | 牝馬三冠・GⅠ9勝 |
リスグラシュー | 2016年8月27日 2回新潟 | 有馬記念等GⅠ4勝 |
ゴールドシップ | 2011年7月9日 1回函館 | 牡馬二冠・GⅠ6勝 |
オルフェーヴル | 2010年8月14日 3回新潟 | 牡馬三冠・GⅠ6勝 |
アパパネ | 2009年7月5日 2回福島 | 牡馬三冠・GⅠ5勝 |
テイエムオペラオー | 1998年8月15日 4回京都 | 牡馬二冠・GⅠ7勝 |
メジロドーベル | 1996年7月13日 2回新潟 | 牝馬二冠・GⅠ5勝 |
ナリタブライアン | 1992年8月15日 1回函館 | 牡馬三冠・GⅠ5勝 |
GⅠ勝利数の多い馬たちの中でも、これだけの馬がいわゆる夏競馬でデビューしています。つまり夏競馬、特に2歳戦に注目することで、未来の名馬の目撃者になれる可能性があるわけです。
荒れやすいから高配当を狙える!
夏競馬が荒れやすいのは事実です。これは上記の通り、馬の体調の急激な変化や、3歳馬の実力の見極めが難しいという要因があるからでしょう。
しかし反対に考えれば、夏競馬のコツをつかめば、一攫千金の大穴馬券をゲットできるチャンスとも言い換えることができます。夏競馬のコツをつかむには、まず夏競馬に参加することが重要。
後の必勝のためにも、夏競馬の結果や傾向を注視するのがおすすめとなります。
3歳未勝利戦の激闘
歴史に名を遺す名馬がいる一方で、その実力を発揮しきれず引退していく馬もいます。むしろサラブレッドの大部分はこういった馬ということもできるでしょう。
中でも残念なのは、中央競馬で1勝もできずに引退していく馬たちです。こういった馬たちの最後のチャンスがこの夏競馬となります。
3歳未勝利戦というカテゴリーのレースがありますが、このカテゴリーが存在するのはこの夏競馬まで。2018年までは秋競馬まで未勝利戦が組まれていましたが、近年のサラブレッドの頭数増を踏まえ、2019年から3歳未勝利戦は夏競馬とともに終了する日程になっています。
3歳でまだ未勝利の馬たちにとっては、この夏競馬が最後の勝負の舞台。夏競馬といってもおよそ2ヶ月ですから、一般的には2走、多くても3走といったところでしょう。
夏競馬の3歳未勝利戦は、ラストチャンスにかける陣営渾身の仕上げの3歳馬の争いとなり、見応えのあるレースが期待できます。
見応えはあっても、そんなレベルの馬は将来的に出世しないだろう。そう思っている方にご紹介したいのがヒシミラクルという馬。このヒシミラクルは、初勝利を挙げたのがデビュー10戦目。2001年8月の夏競馬でデビューし、初勝利が2002年の5月末。同世代のダービー当日でした。
しかしその後2002年の夏競馬で当時の1000万下条件(現在の2勝クラス)まで勝ち上がり、その勢いで菊花賞を勝利。さらに翌春の天皇賞・春、宝塚記念を連勝しGⅠ3勝の実績を残しています。
ひょっとしたら今年の夏競馬の3歳未勝利戦にもヒシミラクルのような遅れてきた超大物が隠れているかもしれません。
夏競馬は結局勝てれば楽しめる!勝ち方のコツ3選!
競馬の楽しみ方は人それぞれです。しかし大多数の方の楽しみの中心は、馬券が当たるかどうかではないでしょうか。つまり簡潔に言ってしまえば、夏競馬だろうがなんだろうが、馬券が当たればつまらないなんてことはないということです。
そこで夏競馬の的中率を上げるために、ぜひ知っておきたいポイントを3つご紹介しましょう。
しっかり調整された馬を狙う
まずは何より出走馬の調子をつかむことが重要です。繰り返しになりますが、日本の夏は高温多湿で、馬にとっても厳しい季節となります。そんな厳しい季節でも、体調をしっかりと維持している馬こそがねらい目ということになります。
調子を見るにはまず調教に注目。しっかりと強度の高い調教を、通常通りの本数乗れているかどうかがポイントです。さらに前走後、どこで調整をしていたのか、順調に使えているのかなどにも注目。そして最終的な情報が馬体重です。
大して強い調教をしていないのにマイナス体重などという馬には要注意。いくら地力があっても不調では信頼できないということになります。
夏競馬はまず調子に注目。これは大前提の予想スタンスとなります。
夏は牝馬
競馬界では一般的に夏は牝馬のほうが調子がいいという考え方があります。将来出産を経験することになる牝馬は、そもそも牡馬よりもタフであり、夏の暑さにも強いとういうのが理由です。
実際に夏競馬で牝馬が激走し、大穴馬券というケースは少なくありません。もちろん馬の実力、調子を優先するのは当然として、最後に迷った場合などは、牝馬を優先して考えるというのも、荒れる馬券を仕留めるコツといえるかもしれません。
前走の着順を必要以上に重要視しない
馬の調子を重視するという点とある意味重なる部分がありますが、前走の着順は前走の話であり、このレースに直接関係ありません。いくら前走でいい結果を残していても、このレースまでの間に体調を崩していては意味がありません。あまり前走の着順にこだわる必要はないでしょう。
もうひとつ前走の着順に関して注意したいのが三歳馬です。三歳馬の場合、前走が三歳限定競走の可能性があります。三歳限定のOP特別で好走しているからといって、古馬混合のOP特別で即通用するとは限りません。反対に前走OPで凡走していても、条件が変わって能力開花という可能性も考えられます。
春競馬の三歳馬は、最後までダービーやオークスなどクラシックへの希望を捨てていないケースが多々あります。そのため元来マイラーの馬が、中距離路線で惨敗を続けているというケースもあるわけです。
こういった馬が、自己条件に戻った夏競馬のマイル戦に出てきて、人気薄で圧勝などというケースも珍しくありません。
前走の着順の数字にこだわりすぎないように注意しましょう。
まとめ
夏競馬がつまらないと感じているということは、まだ夏競馬の楽しみ方を知らないだけというように考えることもできます。
夏競馬でしか見られない楽しさを発見できれば、むしろ春競馬や秋競馬よりも楽しみになるかもしれません。
まずは2歳戦で将来のスター候補を探す、馬券は穴目を狙うなどなどから考えると、一気に夏競馬の楽しみ方が理解できるでしょう。